もう7年前にもなるけれど、（前）大統領が、「毎年10月22日に全ての高校生に読ませるように」と発令して、折りしも、それが、大統領就任後の初の発令でもあったこともあって（余計に目立ち）、教師たちの中では（政治的にや様々な背景も踏まえて）反発の声も上がっている一方で、（押し付けられることを嫌う世代のはずの）当の高校生たちには感動を呼び起こしている様が並行して、連日報道されて、物議を醸した。

それが、"La lettre de Guy Moquet ギィ・モケの手紙"。

日本でも、一部話題には上っていたものの、邦訳されるほどではなく、でも、興味のあるひとたちにはぜひ知ってもらえたらと思って、ブログに載せていたのが、デザインフォーマットを変えたせいなのか、その頃の記事が白文字にならずに全て黒くつぶれてしまって読めないと、ご連絡をいただいたので、改めて、ここに、もう1度。

ノルマンディー大作戦から70年の今年、第2次世界大戦（は、フランスにとっては、近年最後の戦争ではないとはいえ）のことが話題に上る機会は多い今年、ちょうど息子が11歳で歴史で学んでいるタイミングなこともあって、改めて、識ることも・・・。当時の戦車が保存されているのを見学させてもらう学校行事の機会を得た話も、6月に綴ったので、ご記憶にある方もいるかも。

第2次世界大戦中に犠牲になった若い命の悲しい歴史は、形は違えど、フランスにもあって、これは、レジスタントとして散った17歳の少年が（家族宛に）遺した手紙。よかったら、どうぞ、ご一読ください。



『Derniere lettre de Guy MOQUET　最後のギィ・モケの手紙（訳）』

大切なママン
小さなかわいい弟
大好きなパパ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 シャトー・ブリアンにて　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 1941年10月22日

僕はもうすぐ死ぬよ！気がかりなのは、特に、ママン・・・気を確かにもって。僕は、大丈夫だから。僕の前に逝った皆と同じように毅然としていたいと思っている。

もちろん、僕だって、もっと生きていたい。せめては、犬死にならずに、何かをもたらしてくれることだけを願っている。ジャンには、お別れを言えないままだ けど、兄弟同様のロジャーとレネとは最後の抱擁を交わせたよ。でも、実の弟には会えないままになるのが、辛いよ！僕の遺品が全てママンのところに届くとい いんだけど。いずれ、セルジュに使えると思うし、彼がそれを誇らしく感じながら着てくれたらいいな。

パパにも、ママンと同じように悲しませるね。最後のお別れを言うよ。でも、僕は敷いてもらったレールの上をきちんと歩いてきたつもりなのはわかってね。

大切な友達皆にもこれでお別れだ。そして、僕の大好きな、まだ幼い弟にも。彼には、しっかり勉強して、たくさんのことを学んで、いずれ立派な大人になってほしい。

17歳半、短い人生だけれど、何も後悔していない…皆ともう会えなくなることだけを除いてはね。

僕は、タンタンやミッシェルとも一緒に逝くんだよ。だから、ママン、僕が願っているのは、約束してほしいのは、頑張ってこの悲しみを乗り越えて、立ち直ってほしいということだよ。

もうこれ以上は書けない。これで、本当に皆とお別れだ。ママン、小さなセルジュ、パパ。最後は子どもらしい気持ちに戻って、お別れをいうよ。頑張ってね！
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　皆のことを愛してやまないギィより

最後に言い残したいこと(追伸）：　生きていく皆には、いい世の中をつくって欲しい。死を迎える僕ら27人に、恥ずかしくない生き方をしてほしい。



注*）　ジャンは親友の1人。ロジャー、レネは党内の同士で同じ10代。セルジュが、実の弟。

注**）　タンタンは、ジャンピエール・タンボー。ミッシェルは、シャルル・ミッシェル。いずれも、ギィが尊敬していた党の幹部。

パリのメトロ13号線の駅Guy Moquetは、17区の政治家の息子として生まれ育ったこの少年の名前から。そして、やはり、パリのメトロの駅名になっていて、Charles Michelsシャルル・ミッシェルという駅が10号線に、パリ11区（マレ地区）には、Rue Jean-Pierre Timbaud　ジャンピエール・タンボー通りがある。